年末の有馬記念が近づくたびにネット上で爆発的に拡散されるのが、「JRAが公式に仕掛けたサインがある」という都市伝説です。特にJRA年間プロモーションキャラクターを務める俳優陣が競馬場に登場する年は、プレゼンターの衣装カラー、身につけたアクセサリー、さらにはプロモーション映像のカット割りに至るまで深読み合戦が繰り広げられます。
しかし、JRA関係者への取材や競馬公正室の厳格なレギュレーションに照らし合わせれば、レース結果に関わるサインなど物理的・構造的に仕掛けられるはずがありません。競馬法に基づき農林水産省の厳しい監督下で行われる公営競技において、レース結果をあらかじめ示唆するような作為は一切存在し得ないのが動かしがたい事実です。
それにもかかわらず、なぜサイン馬券の噂は消えないのでしょうか。その背景には、人間の脳がランダムな情報の中から意味のある規則性を見出そうとする心理現象「アポフェニア」と「確証バイアス」があります。過去数十年の有馬記念過去データ傾向を客観的に精査すると、中山芝2500mという特殊な舞台では、枠順(特に内枠有利・外枠不利の傾向)や直前のローテーション、菊花賞や天皇賞(秋)からの消耗度が結果を支配していることが明白です。サインに結びつけられた数字は、無数に存在するレース結果の組み合わせの中から、事後的に偶然一致した要素だけを抜き出して針小棒大に語られているに過ぎません。