朝ドラにおける有村架純の歩みには、対照的な2つのドラマが存在します。1つは「敗者復活」から生まれた偶然の出会い、もう1つは「絶対的な信頼」による必然の指名です。
『あまちゃん』において、有村架純はもともと主人公・天野アキ役の最終オーディション(応募総数1,953人)に挑んでいました。惜しくもヒロインの座は能年玲奈(現・のん)に譲ったものの、脚本家の宮藤官九郎やチーフ演出家らの目に留まり、「春子の影のある過去と、どこか不器用なアイドル志望の少女を体現できるのは彼女しかいない」と急遽キャスティングされた経緯があります。手記や当時のインタビューでも、彼女自身が「悔しさを抱えながらも、全力で1980年代を生き抜く気持ちで挑んだ」と振り返っています。
一方の『ひよっこ』は、朝ドラとしては極めて異例となるオーディションなしの直接キャスティングでした。脚本を担当した岡田惠和は、過去のドラマ共演や現場での佇まいを通じて彼女の資質に惚れ込み、「有村架純をヒロインに据えて、彼女の魅力を最大限に引き出す物語を一から紡ぎたい」と熱烈に希望したことを明かしています。特別な才能や偉業を持たない等身大の少女が、高度経済成長期の東京で健気に生きていくというプロットは、彼女が持つ飾らない人間性と静かな芯の強さがあって初めて成立した企画でした。