かつてのトレンディドラマに描かれたような、背伸びをしたお洒落なレストランや遊園地でのデートは、今の世代にとって必ずしもリアリティを持たない。本作で描かれるのは、もっと地味で、それでいてヒリヒリするような日常の延長線上にあるやり取りだ。「どこに行くか」ではなく、「どう思われているか」に神経をすり減らす登場人物たちの姿に、読者は強い既視感を覚える。
特に、相手からのメッセージ1通に対して何時間も悩み、送信ボタンを押すのを躊躇うシーンは、デジタルネイティブ世代にとって日常茶飯事の光景だろう。スマートフォンの普及によって、常に繋がっていることが求められる現代だからこそ、一歩を踏み出すことのハードルはかつてないほど高くなっているのだ。