日本の映像世界における「表現の壁」を打ち破る決定打となったのが、世界を震撼させた『全裸監督』の登場だった。主演を務めた山田孝之の狂気を孕んだ圧倒的な演技と、メガホンをとった武正晴監督の妥協のない演出美学は、昭和末期の狂乱的なポルノ産業を舞台にしながらも、普遍的な人間の野心と欲望の物語へと見事なまでに昇華させて見せた。
武正晴監督がスクリーンに刻みつけたのは、単なる性的刺激ではない。カメラの前で裸体と魂を晒し出す人間の滑稽さと美しさだ。山田孝之が見せた怪物的なパフォーマンスは、従来のエロティシズムの定義を根底から覆し、メジャーシーンにおける「性表現のあり方」に決定的なパラダイムシフトをもたらした。