なぜ『IT/イット』の恐怖は、これほど長く尾を引くのでしょうか。その根底には、原作者スティーヴン・キングの緻密な心理描写と、アンディ・ムスキエティ監督による計算し尽くされた映像技法があります。
本作に登場するペニーワイズは、単に肉体を破壊するモンスターではありません。対象が「心の底で最も恐れているもの」へと自在に姿を変える能力を持っています。病気への恐怖、親からの虐待、罪悪感といった、子どもたちが抱えるリアルなトラウマを具現化して精神的に追い詰めるのです。恐怖によって肉体の味が美味しくなるという残酷な設定が、怪物の異常性を際立たせています。
また、古典的なジャンプスケア(急な大音量と映像で驚かせる手法)だけでなく、画面の奥で背景と同化してじっとこちらを見つめるペニーワイズの配置など、じわじわと忍び寄るサスペンス描写が絶妙なバランスで組み込まれている点も見逃せません。