この狂乱の裏で、割を食っているのが昔ながらの果実作りを愛する生産者たちだ。青森のリンゴ園を訪ねると、70代の園主が地面に落ちた果実を見つめて苦笑いを浮かべた。「酸っぱいリンゴは、もう市場が引き取ってくれないんだよ。紅玉のような料理用の品種ですら、甘くしろとバイヤーから言われる。狂ってるよ」。
若年層を中心とする消費者の間では、「酸味」はもはや味の個性ではなく、排除すべき「欠陥」として処理されつつある。噛んだ瞬間に脳天を突き抜ける直接的な甘さだけが評価され、咀嚼を重ねて広がる渋みや青くささは敬遠される。結果として、地域の気候風土が育んできた個性豊かな在来種は次々と伐採され、全国の果樹園が単一の「超高糖度クローン」へと画一化されていく。