現代の音羽屋の筆頭といえば、七代目尾上菊五郎である。人間国宝として歌舞伎界の頂点に君臨し、江戸歌舞伎の意気と粋を体現するその存在感は圧倒的だ。そしてその血を引く長男・尾上菊之助は、端正な容姿と確かな演技力で、現代の音羽屋を牽引する大看板へと成長を遂げた。
しかし、音羽屋の家系図を真にユニークなものにしているのは、映画界で日本を代表する女優となった長女・寺島しのぶの存在と、その息子である市川眞秀(まほろ)の登場だ。かつて歌舞伎の家系において「女性」は継承の外側へと置かれがちだったが、寺島しのぶの卓越した演技への情熱と、フランス人の夫との間に生まれた眞秀が歌舞伎の初舞台を踏んだ事実は、名門の血統観に爽やかな新しい風を吹き込んだ。
尾上菊五郎家を中心に広がるこの濃密な血縁関係は、単に血をつなぐだけでなく、多様な感性を取り込みながら技と精神を後世に手渡すという、伝統芸能の最新形態を提示している。