彼女の真骨頂は、ジャンルを選ばないその自在な表現幅にある。社会の底辺で力強く生きる女性を描いた文芸映画から、洗練されたアクションと人間ドラマが交錯する本格時代劇まで、完璧に演じ分けた。
若き日の才能を爆発させた『浪華悲歌』(なにわえれじい)では、現代の大阪を舞台に、犠牲になりながらも逞しく生きるモガ(モダンガール)を演じ、日本映画の写実主義を切り拓いた。一方、黒澤作品『用心棒』では、宿場町を牛耳るヤクザの女房・おとら役を怪演。欲深さと滑稽さを併せ持つ悪女をみごとに演じ切り、作品に重厚なリアリティと毒を与えた。一文芸作品のヒロインから悪辣な老婆まで、演じ分けの振れ幅の広さはまさに圧巻だ。