ネット上の掲示板やSNSでは、未読者を中心に時折「隠蔽捜査の主人公は融通の利かないロボットのような冷血漢で、読んでいて息が詰まるのではないか」という先入観や誤解が散見されます。
しかし、これは明確な誤解です。竜崎伸也という男の真骨頂は、「他人に厳しく当たる以上に、自分自身の過ちや弱さに対しても一切の言い訳をせず厳格である点」にあります。
多くの組織人が上司に絶望するのは、都合の良い時だけ正論を振りかざし、いざ責任問題が発生すると部下に責任を押し付けて保身を図るからです。しかし竜崎は正反対の行動を取ります。部下が現場判断で下した正当な職務執行に対して批判が殺到した際、上層部やマスコミの前に立ちはだかり、「現場の指揮を執り、許可を出したのは署長である私だ。責任はすべて私にある」と言い切ります。
また、私生活における竜崎の不器用さも大きな魅力です。家庭内では妻の冴子に頭が上がらず、思春期の子供たちとの接し方に真剣に悩み、育児本を熟読しては「人間関係は数式通りにはいかない」と一人自省します。この「組織人としての圧倒的な頼もしさ」と「一人の父親としての等身大の苦悩」のギャップこそが、ネット上の評判で「一度読み始めると竜崎に惚れ込まずにはいられない」と評される最大の要因です。