猗窩座という鬼がなぜ「弱者」を異常なまでに嫌悪し、「至高の領域」を目指して強さを渇望し続けたのか。その真相は、記憶を失ってもなお魂にこびりついて離れなかった「大切な者を守れなかった己の弱さへの憎悪」にある。
彼が口にし続けた「弱者には虫唾が走る」という言葉は、かつて父を救えず、慶蔵と恋雪を毒殺から守れなかった人間時代の自分自身に向けられた呪詛に他ならない。鬼となって数百年の間、奪われた記憶の空白を埋めるかのように拳を振るい続けたが、いくら強くなってもその渇きが癒えることはなかった。強さを求める行為そのものが、無意識下で繰り返される自罰の儀式だったのだ。