衝撃のデビューから2年後の2005年、伊藤沙莉は日本テレビ系ドラマ『女王の教室』で田中桃子役を演じ、全国区の知名度を獲得します。主演の天海祐希が演じる冷酷な鬼教師・阿久津真矢と対峙する小学校の教室において、志田未来演じる主人公・神田和美を執拗に追い詰める「いじめっ子グループ」の中心人物として、視聴者に強烈な爪痕を残しました。
その演技のリアリティは凄まじく、放送当時、視聴者から本気で憤りの声が寄せられるほどでした。同年代の共演者には、志田未来、福田麻由子、夏帆といった錚々たる子役が顔を揃えていましたが、その中でも伊藤沙莉の放つ陰影のある目つきと不敵な態度は異彩を放っていました。しかし、この卓越した演技力とトレードマークである声質が、思春期の彼女に深い葛藤をもたらすことになります。
彼女の代名詞でもあるハスキーボイスは、幼少期からの天然のものですが、思春期に入ると「少女らしい可愛らしい声が出ない」「王道の清純派ヒロインのオーディションにことごとく落ちる」という壁にぶつかりました。舞い込む役柄は、不良少女、ヤンキー、いじめっ子、あるいはコミカルな三枚目ばかり。「なぜ自分は普通の可愛い役ができないのか」という強いコンプレックスを抱え、自身の声と容姿に対して思い悩む日々が続きました。