日本銀行券C号券として1963年(昭和38年)11月1日に発行が開始され、1986年(昭和61年)まで製造された伊藤博文千円札は、高度経済成長期の日本経済を支え続けた象徴的な紙幣です。約23年間にわたり流通し、累計発行枚数は約129億枚という天文学的な数字にのぼります。この膨大な発行量こそが、旧千円札の価値の現在地を決定づける最大の要因となっています。
市場の冷厳な現実として、日常的に流通してシワや汚れ、折り目がついた「並品」の場合、伊藤博文千円札の買取相場は基本的に額面通りの1,000円、あるいは買取専門店では再販コストを考慮して額面以下の引き取りや買取不可となるケースが珍しくありません。「昭和の古いお札だから何でも数倍になる」というネット上の噂は、並品に関しては完全に誤解です。
しかし、条件が揃った瞬間にその価値は激変します。熱心な収集家が存在する貨幣市場では、折り目が一切ない「伊藤博文千円札 ピン札の価値」は額面を上回る1,200円〜2,000円前後、後述する最初期発行分や記番号の組み合わせによっては1万円〜数十万円で取引されています。つまり、手元の旧札を査定に出す価値があるかどうかは、「状態(グレード)」と「紙幣固有の記番号」の2点を正確に見極められるかどうかにかかっています。