「医食同源」という四字熟語を目にしたとき、多くの人は『黄帝内経(こうていだいけい)』や『神農本草経』といった古代中国の医書に記された言葉だと連想します。しかし、中国の正統な古典文献をいくら調査しても「医食同源」という語句は見当たりません。この言葉は1972年に日本の内科医・新居裕久(にい・ひろひさ)氏が考案・発信した造語です。
新居医師は、NHKの人気番組『きょうの料理』のテキスト執筆や著書の出版、香港で開催された栄養学の学会発表などを通じて、中国に古くから伝わる「薬食同源(やくしょくどうげん)」の思想を日本人に親しみやすく伝えるためのフレーズとして「医食同源」を生み出しました。「薬」という言葉が持つ重苦しいイメージを「医(医療・健康)」に変えることで、日常の食卓がいかに病気予防に直結しているかを直感的に伝えようとしたのです。
興味深いことに、このキャッチーで本質を突いた言葉は日本国内で急速に定着しただけでなく、後に中国や台湾、香港などの華語圏へ逆輸入される現象まで引き起こしました。現在では中国の辞書にも掲載されるケースがありますが、その発祥が1970年代の日本にあるという点は、食文化史における興味深い事実です。
日常会話やビジネス、健康コラムなどで用いる際の医食同源の使い方・例文としては、以下のような表現が自然です。
- 「サプリメントに頼りすぎるのではなく、医食同源の考え方に基づいて旬の野菜を中心とした献立を整える。」
- 「祖母が毎日元気で過ごせている秘訣は、まさに医食同源を体現したバランスの良い和食中心の生活にある。」