長年にわたり「一卵性双生児の遺伝情報は完全に同一である」と語られてきましたが、遺伝子解析の技術革新によってこの常識は修正を迫られています。2026年にアイスランドの医学研究機関「デコード・ジェネティクス」が発表した大規模ゲノム解析によると、一卵性双生児の間には受精卵が初期分裂する段階で平均5.2個の早期体細胞変異が生じていることが判明しました。全体の約15%のペアでは変異の数がさらに多く、遺伝子の塩基配列レベルで明確な差異が存在します。
さらに、遺伝子の「塩基配列そのもの」が同一に近かったとしても、遺伝子のスイッチがオン・オフされる仕組み(エピジェネティクス)は、胎盤内での血流配分や出生後の食事、ストレス、運動などの環境要因によって年齢を重ねるほど乖離していきます。大人になった一卵性のふたりで罹患する病気や体型に違いが生じるのは、このエピジェネティックな変化が大きな要因です。
一方、警察の鑑識やスマートフォンの生体認証でも用いられる「指紋」について、一卵性双生児の指紋は全く一致しません。指紋の基本パターン(渦状紋や蹄状紋など)には遺伝的傾向が反映されるものの、隆線(指先の細かな皮膚の盛り上がり)の分岐や終点の位置は、胎生10〜16週頃に子宮内で羊水に触れる圧力、指を吸う動作、子宮壁との接触といった微小な物理的ストレスによって偶発的に形成されるためです。そのため、世界最高峰の生体認証システムであっても、指紋で一卵性のふたりを混同することはありません。