多くの人が抱く最大の疑問は、「なぜ、いつ小泉今日子が熱海に奉納したのか」という動機でしょう。鳥居の銘文や関係者の証言を照らし合わせると、奉納されたのは2010年代半ば(2015年前後)であることが判明しています。
この時期は、小泉今日子さんのキャリアにおいて最大のパラダイムシフトが起きたタイミングと一致します。彼女は2015年に制作会社「株式会社明後日」を設立。長年所属した大手芸能事務所から独立し、自ら舞台の企画・プロデュースを手掛けるという、既存のアイドル・女優像を打ち破る挑戦を開始しました。昭和・平成の芸能界で確立された強固なレールを自ら降り、50代を目前にして自立したクリエイターとしての道を切り拓く――。その覚悟と決断は、並大抵のものではありませんでした。
芸能界には古くから、厄年や独立起業、大勝負の前に神社仏閣へ鳥居や灯籠を奉納し、厄を落として運気を拓く伝統があります。関係者への聞き取りによると、小泉さんはプライベートで静養や舞台の構想を練るために熱海を頻繁に訪れており、歴史あるこの地の自然と神社に深い敬意を抱いていたとされます。源頼朝が配流の憂き目から天下を掴んだ「再起と大成」の聖地・伊豆山神社に自らの名を刻んだ行為は、まさに自らの足で未来を切り拓く不退転の決意表明だったと読み解くことができます。