続く作品群でも、彼の探求心は留まることを知らなかった。ラーメンの正しい食べ方を巡る「ラーメン・ウェスタン」という奇抜なコンセプトで世界中を魅了した『タンポポ』。食欲と性愛という人間の根源的な欲求をコミカルに描き切ったこの作品は、後に欧米でもカルト的な人気を博すことになる。
そして、国税局査察部と脱税者の攻防をサスペンスフルに描いた『マルサの女』で、映画監督としての評価は決定的なものとなった。主人公の板倉亮子を演じた妻であり女優の宮本信子の圧倒的な存在感と、徹底した取材に基づくリアリティ。従来の「男社会」の警察ドラマとは一線を画す、知性と執念のエンターテインメントを完成させたのだ。