伊坂幸太郎作品は基本的に独立した単発長編が多く、どの作品から読んでも物語としては完結します。しかし、殺し屋シリーズの順番や、作中の時系列、キャラクターの精神的成長を最大限に楽しむための「理想的な読む順番」が存在します。
1. 初心者が最初に手に取るべき入門ルート
伊坂作品の持ち味である「軽快な会話」と「鮮やかな伏線回収」を手軽に体感するなら、伊坂幸太郎初心者向け小説として定評のある以下の2作品からスタートするのが王道です。
- 『陽気なギャングが地球を回す』:嘘を見抜く名人、体内時計が正確な女、スリの達人、演説上手なリーダーという4人が織りなす痛快コンゲーム。死の影が薄く、純粋なエンタメとして笑って楽しめます。
- 『アヒルと鴨のコインロッカー』:仙台のアパートに引っ越してきた大学生が、隣人の奇妙な男から「広辞苑を盗むために本屋を襲撃しよう」と誘われる物語。中盤以降に明かされる構造の美しさは、読書初心者を一気に伊坂ファンへと引き込みます。
2. 爆発的人気を誇る「殺し屋シリーズ」の読む順番
裏社会で生きる個性的な殺し屋たちの日常と死闘を描いた「殺し屋シリーズ」は、必ず以下の刊行順通りに読むことを強く推奨します。
- 第1作:『グラスホッパー』(元教師の鈴木が、妻を殺した男への復讐のために裏組織へ潜入。押し屋の槿、自殺専門の鯨、ナイフ使いの蝉が激突するダークサスペンス)
- 第2作:『マリアビートル』(『グラスホッパー』の数年後、東京発盛岡行きの東北新幹線はやてを舞台に、不運な殺し屋・七尾やサイコパス中学生・王子らが交錯する傑作密室劇)
- 第3作:『AX アックス』(超一流の殺し屋でありながら、家庭では妻の機嫌に怯える恐妻家の兜。家族のために裏稼業から足を洗おうとする父親の哀愁と死闘を描く連作短編)
- 第4作:『777 トリプルセブン』(高級ホテルを舞台に、あの「世界一不運な殺し屋」七尾が再び理不尽なトラブルに巻き込まれるドタバタアクション)
マリアビートルとグラスホッパーを比較すると、前作『グラスホッパー』の陰鬱なノワール感に対し、『マリアビートル』はアクションコメディ要素が大幅に強化されています。前作の重要人物や組織の残影が後続作の背景として緻密に機能しているため、順番を飛ばさずに追うことで、登場人物の台詞一つひとつの重みが劇的に変化します。