料理の質の高さも、単なるレトロブームに終わらない理由だ。看板メニューである自家製キッシュは、サクサクとしたパイ生地の中に旬の野菜と豊かなコクのチーズが凝縮されており、一口ごとに素材の旨味が広がる。決して気取った高級料理ではない。だが、手間暇を惜しまずに作られた一皿には、料理人の確かなプライドが宿っている。
夜の営業で振る舞われるナチュラルワインとのペアリングも秀逸だ。生産者の顔が見える有機栽培のワインが、木造の温かい空間と響き合い、日常の慌ただしさを忘れさせる。ファストフードや効率化が極限まで進んだ現代だからこそ、職人の手が加わった食体験がこれほどまでに響くのだろう。