本作の魅力は、単なる幼なじみ同士の恋愛模様にとどまらない。矢沢あいが描くのは、恋と同時に「自分自身の足で立つこと」を模索する等身大の若者たちの姿だ。矢ノ倉学園に通う実果子が抱くデザイナーへの情熱と挫折、そして自立への葛藤は、何年経っても色あせないリアリティを放つ。
隣の部屋に住むツトムとの関係も一筋縄ではいかない。お互いを誰よりも深く理解しながらも、夢に向かって突き進むなかで生じる擦れ違い。相手を好きだからこそ自分を見失いたくないという痛切な想い。甘酸っぱさとほろ苦さが交錯する人間ドラマこそが、世界中の読者の胸を打ち続ける最大の要因だ。