引退後のマサ斎藤を待ち受けていたのは、パーキンソン病という、これまでのどんな対戦相手よりも狡猾で過酷な敵だった。徐々に自由を奪われていく手足、思うように発声できない喉。かつて世界を制覇した頑強な肉体が少しずつ蝕まれていく日々に、どれほどの苦悶があったかは想像を絶する。
だが、彼は引きこもらなかった。公の場に姿を現し、震える身体を支えられながらも、リングサイドで後輩たちの試合を鋭い眼光で見つめ続けた。「病気に負けてたまるか」。その姿は、病魔と闘う全国の患者たちに計り知れない勇気を与えた。
東京五輪の聖火ランナーを務めたいという夢を語り、リハビリに打ち込む姿は、現役時代のどんなタイトルマッチよりも壮絶な戦いだった。2018年7月、75歳で旅立つその瞬間まで、マサ斎藤は文字通り「Go for broke」の魂を宿したファイターであり続けた。