専門家が最も危惧しているのは、見栄えの問題にとどまらない環境科学的な生態系破壊だ。富士山の雪解け水は、数十年から数百年の歳月をかけて地下に浸透し、山麓の豊富な湧水群や水源を育む生命の源となっている。初冠雪が遅れ、冬の積雪量が減少することは、春先の地下水涵養量を直接的に減らすことを意味する。
また、富士山の高標高域に生息する高山植物や動植物への影響も避けられない。通常であれば雪の下で冬眠や休眠に入るはずの植物や昆虫が、高気温と乾燥によって生活リズムを狂わされている。寒さに適応してきた生態系が急激な環境変化に追いつけず、種の絶滅や植生の変容が急速に進む危険性を、環境科学の専門家たちは強く主張している。