では、利用される側の旅館やホテルはこの指導をどのように受け止めているのでしょうか。観光地にある複数の温泉旅館やビジネスホテル関係者に取材を試みると、学校側の熱血指導とはあまりにかけ離れた「困惑の本音」が浮かび上がってきます。
水滴検査に対する旅館側の意見として最も多く聞かれるのは、「そこまで神経質に拭き取る必要は一切ない」という明確な否定です。宿泊施設側にはプロの清掃スタッフが常駐しており、チェックアウト後の清掃ルーティンにおいて水回りの消毒・清掃・拭き上げは標準作業に含まれています。生徒が中途半端に拭いたところで、業務用の清掃工程が省けるわけではありません。
それどころか、宿泊施設側からは次のような切実な苦情すら寄せられています。
「備え付けの客用フェイスタオルやバスタオルを使って、浴室の床やトイレの便器周りを拭かれてしまうのが一番困ります。繊維が傷むだけでなく、衛生的に再利用できなくなり、廃棄せざるを得ないケースがあるのです。ティッシュを大量に消費して排水口に詰まらせるトラブルも起きており、正直に言えば『普通に使ってそのまま出ていってほしい』というのが本音です」
「旅館に迷惑をかけないため」という学校側の大義名分は、現場のオペレーションから見れば完全な独り相撲であり、時には施設側に余計な損害を与える迷惑行為にすら成り下がっているのが実情です。