多くの日本人が「昔のドラえもん」として真っ先に思い浮かべるのは大山のぶ代さんの声ですが、アニメ史における初代ドラえもんの声優は富田耕生さんです。1973年4月から半年間、日本テレビ系列で放送された初のアニメ化作品(通称:日テレ版)は、現在広く知られている設定とは大きく異なる実験的な要素が満載でした。
日テレ版の序盤では、富田さんが演じるドラえもんは「世話焼きなおじさん」のような下町気質のキャラクター付けがなされていました。その後、番組後半に向けてより原作のコミカルさに寄せるため、野沢雅子さんへと声優が交代したという異例の経緯があります。のび太役を太田淑子さん、ジャイアン役を肝付兼太さん(後のスネ夫役)が務めるなど、声優陣の布陣も現在とは全く異なっていました。
さらに、原作初期に登場したアヒルのロボット「ガチャ子」がレギュラーとして登場していたり、ドラえもんが現在のようにお行儀の良い居候ではなく、周囲を引っ掻き回すトラブルメーカーとして描かれていたりと、設定面でも過渡期の荒削りなエネルギーが漂っていました。制作会社の解散に伴いフィルムの原版が散逸したため、現在では公式に視聴することが極めて困難な「幻の作品」として語り継がれています。