「見た目や先入観だけで生物を断罪するのは、自然の豊かさを見失うことにつながる」——そう警鐘を鳴らすのは、九州大学総合研究博物館准教授で昆虫学者の丸山宗利氏だ。丸山氏は数々の著書や展示を通じ、好蟻性昆虫(アリの巣に居候する昆虫)を含む多様なゴキブリの驚くべき共生関係を紹介してきた。
アリの巣の中でフェロモンを偽装し、アリから餌を奪いながら巧みに生きる種や、子育てを行い仲間同士でコミュニケーションをとる種など、その社会行動は実に複雑で緻密だ。丸山氏が提示する知見は、私たちが幼少期から刷り込まれてきた「ゴキブリ=害悪」という固定観念を根底から揺さぶる。生態系の網の目において、彼らは決して余計な存在などではなく、むしろ精緻に組み込まれたキープレイヤーなのだ。