これほどまでに区間記録や総合タイムが更新され続けている背景には、単なる個人の才能にとどまらない複数の要因が重なり合っています。
最大の転換点となったのは、カーボンプレート内蔵の厚底レーシングシューズの普及です。エネルギーリターン効率に優れたシューズの登場により、ランナーの着地衝撃が大幅に緩和され、レース後半の失速が激減しました。脚への負担が減ったことで、従来よりも高い強度の練習を日常的にこなせるようになった練習環境の質の変化も見逃せません。
次に挙げられるのが、科学的アプローチによるトレーニング理論の進化です。心拍数や乳酸値の測定に基づいた閾値トレーニングが浸透し、無理なオーバーワークを避けつつ最大限の有酸素能力を引き出す指導法が確立されました。高校時代から全国レベルで5000mを13分台で走る選手が各大学に集まり、下級生の段階からトップスピードを維持できる体力が養われています。
そして3つ目は、「ハイペースを恐れない選手たちの意識改革」です。かつては1kmを3分00秒で刻むことが巡航ペースの基本とされていましたが、現在は1kmあたり2分50秒〜2分55秒前後が標準ペースとなっています。序盤からの積極的な展開が当たり前になったことで、レース全体の底上げが加速しています。