ネット上の言説やSNSの議論では、憲法の原則についていくつかの重大な誤解が散見されます。代表的な3つの誤解を正しく検証します。
誤解1:「民主主義だから多数決で何でも決められる」という錯覚
国民主権と民主主義を同一視し、「選挙で過半数を取った与党は何を決めても正当である」と解釈するのは立憲主義の観点から誤りです。
「立憲主義」とは、主権者や為政者であっても憲法に縛られ、個人の基本的人権を侵す法律を作ってはならないという歯止めです。多数派の専制から少数派の権利を守ることこそが、憲法が最高法規として君臨する本質的な意義です。
誤解2:「象徴天皇制は国民主権と矛盾している」という思い込み
「天皇が存在するのに国民主権と言えるのか」という疑問を持つ人もいます。しかし、現行憲法において天皇は政治的な権能を持たず、国事行為もすべて「内閣の助言と承認」を必要とします(第3条・第4条)。
第1条に明記されている通り、象徴としての地位自体が「主権の存する国民の総意」に基づいているため、制度論として完全に国民主権の枠組みの中に包摂されています。
誤解3:「平和主義は一切の抵抗権を否定している」という極論
第9条の文面から「侵略されても何もしない丸腰降伏を定めている」と誤解されることがあります。しかし、最高裁判所の砂川事件判決(1959年)をはじめとする法解釈において、日本が主権国家として固有の「自衛権」を持つこと自体は否定されていません。議論の核心は、自衛権を行使するための組織(実力組織)の保持が第9条第2項の「戦力」に該当するか否かという点にあります。