西口の賑やかなグルメの香りとは対照的に、東口の「日暮里繊維街」には全く異なる匂いの世界が存在する。約1キロにわたって約90軒の生地店や服飾資材店がひしめくこのエリアは、ファッション関係者やハンドメイド愛好家にとっての聖地だ。
店内に一歩足を踏み入れると、積み上げられた大量のコットンやウール、デッドストックのヴィンテージ生地、そして染色に用いられた薬液の匂いが混ざり合った独特の「布の匂い」が漂う。新しく入荷したデニムのインディゴ臭や、上質なレザーの甘い香気も鼻をかすめる。
「この匂いを嗅ぐと、『日暮里に来た』と実感する」と語るのは、服飾専門学校に通う学生だ。デジタル化が進む現代においても、生地の質感と匂いを自分の五感で確かめる作業は代えがたい体験であり、繊維街の空気はその情熱を静かに支え続けている。