揚げ浸しが水っぽくなる最大の原因は、揚げたての野菜内部に残る水分と調味液の浸透圧バランスにあります。冷めていく過程で野菜から浸出する水分によって全体の塩分濃度が約0.3〜0.5%低下するため、あらかじめ計算された濃度設計が求められます。
プロの料理人が推奨する夏野菜の揚げ浸しの黄金比は、出汁4:醤油1:みりん1(だし汁200mlに対し、醤油50ml、みりん50ml)です。ここにプロの隠し味として米酢(または穀物酢)を小さじ1〜2、そして種を抜いた鷹の爪1本を加えることで、油の重たさを打ち消す軽やかなキレと後味の引き締まりが生まれます。酢の酸味は加熱によって角が取れ、出汁の旨味を底上げする効果を発揮します。
市販の調味料を用いて夏野菜の揚げ浸しをめんつゆで作る場合は、製品の濃縮度に応じた計算が不可欠です。通常のめんつゆ(3倍濃縮)をつけ汁の基準で作ると、野菜を浸した段階で薄まりぼやけた味わいになります。水で薄める割合を「めんつゆ1に対して水2」ではなく「めんつゆ1に対して水1.5」程度に抑え、少量の生姜の搾り汁を合わせることが、失敗しない近道です。
一方、素材の色味を美しく生かしたい時は夏野菜の揚げ浸しに白だしを用いるのが最適です。白だし1に対して水6〜7の割合で希釈し、みりんを小さじ1足すことで、料亭のような澄んだ琥珀色の仕上がりと上品な鰹の風味が野菜本来の甘みを引き立てます。