梅沢富美男さんの舞台が観客を飽きさせない理由は、女形だけに留まらない圧倒的な芸の幅にあります。梅沢劇団の公演は伝統的に「第一部:芝居、第二部:梅沢富美男 歌謡ショー、第三部:華の舞踊絵巻」という三部構成で展開されることが多く、観客は一度の観劇で多彩な魅力を堪能できます。
特に圧巻なのが、「立ち役(男役)」と「女形」の鮮やかな演じ分けです。舞踊ショーの前半ではキリリとした男伊達や粋な若衆を力強く舞い、後半には一転して息を呑むような艶姿の女形で登場します。立ち役で見せる豪快な殺陣や男らしい所作があるからこそ、その後に登場する女形のたおやかさがより一層際立ちます。
下半身を極限まで低く保つ日本舞踊の基本姿勢と、着物の裾裁き(すそさばき)の美しさは、幼少期から積み重ねてきた大衆演劇の賜物です。力強さと繊細さを兼ね備えたこの二刀流の表現力こそが、梅沢劇団が半世紀以上にわたって満員御礼を記録し続ける原動力となっています。