午前8時過ぎ。シャッターがゆっくりと上がり、自動ドアが開いた瞬間、店内の空気圧が一気に変わる。カゴを2段重ねにした買い物客が、目指すワゴンへと脇目も振らずに競歩で進む。カゴとカゴが軽くぶつかり合い、ビニール袋を擦り合わせる乾いた音が響く。
「はい、奥にもまだあるよ! 慌てないで!」
青果売り場では、ダンボールのまま山積みにされたネギや大根の山から、店員の声が飛ぶ。わずか数分で山が平地に変わる。不揃いなサイズ、曲がったキュウリ、皮に少し傷がついたリンゴ。見た目の均一性を求める一般のスーパーなら弾かれるような規格外品が、ここでは圧倒的なボリュームと価格で主役に躍り出る。買い手も百も承知だ。皮を剥けば味は同じ。むしろ新鮮そのものだ。
精肉コーナーに目を移せば、キロ単位でパックされた豚小間や鶏モモ肉が飛ぶように消えていく。鮮魚コーナーでは、朝獲れの丸魚が氷の上に無造作に並び、値札を見た客が思わず二度見する。店内を巡る客の表情には、節約の悲壮感など微塵もない。掘り出し物を勝ち取った者特有の、どこか晴れやかな興奮が満ちている。