1964年、日本の音楽業界に激震が走った。新進気鋭のレコード会社として立ち上がった日本クラウンの第一期専属歌手として、弱冠17才の青年が鮮烈なデビューを果たしたのだ。そのデビュー曲こそが、後に歴史的名曲と称される『君だけを』である。
当時の歌謡界は大手老舗レーベルが牛耳る強固な世界だった。新レーベルからのスタートは、まさに背水の陣。スタジオ録音の現場には異様な熱気が立ち込めていた。西郷輝彦の持ち味である、胸を突くような切なさとまっすぐな情熱を引き出すため、楽曲の制作陣は細部に至るまで妥協を許さなかった。イントロのドラマチックなメロディラインから、若さゆえの青々とした熱唱まで、すべてが緻密に計算されつつも、彼の素の魅力が爆発する仕上がりとなった。結果としてこの曲は大ヒットを記録し、誕生間もないレーベルを一躍トップ前線へと押し上げる原動力となったのである。