本作の魅力を語る上で絶対に外せないのが、奇跡的とも言えるキャスティングの妙です。主演を務めた西田敏行の演技力は圧巻の一言。取り立て屋としての凄み、一座の座長としての頼もしさ、そして内面に抱える孤独と愛嬌を自在に行き来し、作品全体の推進力となりました。
亀造を支える妻・かをる役には木の実ナナ、債務者の一人で物語の鍵を握る加代役に泉ピン子、さらに財津一郎、潮哲也、津嘉山正種、萬屋錦之介といった錚々たる実力派が顔を揃え、どの場面を切り取っても濃密な演技合戦が展開されます。
そして、本作最大のトピックとして歴史に刻まれているのが、梅沢富美男の大ブレイクです。当時、大衆演劇「梅沢劇団」の若座長として知る人ぞ知る存在だった梅沢さんを、演出の鴨下信一と脚本の市川森一が抜擢。旅役者・市川左太郎役としてドラマ初出演を果たしました。劇中で見せた妖艶極まりない女形の美しさと、切れ味鋭い流し目は「下町の玉三郎」として列島中で社会現象を巻き起こします。
さらに、劇中歌として生まれた名曲「夢芝居」(作詞・作曲:小椋佳)は、梅沢富美男の甘く切ない歌声とともに大ヒットを記録。オリコンチャートを駆け上がり、翌1983年のNHK紅白歌合戦初出場へとつながる金字塔となりました。ドラマの劇伴と歌謡曲が完璧な相乗効果を生み出した先駆的事例としても、本作はテレビ史に名を深く刻んでいます。