国が警戒を呼びかける最大の理由は、被害の「広さ」と「深さ」が過去の災害と次元を異にする点にあります。内閣府の最新防災被害想定によると、最悪のシナリオ(冬の深夜・風速8m/sなど)における死者数は最大約32万3,000人、全壊・焼失する建物は約238万棟に達すると推計されています。
特に強い揺れに見舞われる震度7の警戒エリアは、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、高知県、宮崎県など10県151市町村に及びます。震度6強以上の揺れを含めれば、関東南部から九州にかけての広大な太平洋ベルト地帯が飲み込まれる見込みです。
1995年の阪神・淡路大震災との比較を行うと、災害の本質的な違いが浮き彫りになります。
都市直下の活断層がずれて局所的に猛烈な揺れを引き起こした阪神・淡路大震災(死者6,434人)に対し、南海トラフは長さ数百キロに及ぶプレート境界が一気に破壊される「海溝型巨大地震」です。揺れの継続時間が数分間と非常に長いだけでなく、広範囲に壊滅的な打撃を与え、全国からの救援ルートやインフラ網が同時に寸断されるリスクを孕んでいます。