世間が抱いた「細木数子=詐欺」という疑念の核心は、運命の指針を説くはずの占術が、巨額の金銭を吸い上げる巧妙な集金システムへと変貌していた点にある。彼女の代名詞であった『六星占術によるあなたの運命』シリーズは累計発行部数でギネス記録を樹立するほどの国民的ベストセラーとなり、誰もが「大殺界」の恐怖に怯えた。しかし、その圧倒的な知名度こそが、相談者を逃げ場のない心理的包囲網へと追い込む最大の罠となった。
相談に訪れる者の多くは、病気や家庭不和、事業の失敗など、人生のどん底で藁にもすがる思いを抱えた社会的弱者だった。細木数子はそうした相談者に対し、「先祖の供養が足りない」「このままでは一族が断絶する」といった言葉で強烈な恐怖を植え付けたとされる。心理学でいうコールドリーディングや権威への盲従を巧みに利用し、選択の余地を奪った上で法外な対価を要求する手口は、まさに典型的な霊感商法そのものであった。
占術・スピリチュアル業界において「当たる・当たらない」の主観的領域を超え、明確な民事・刑事上の詐欺性を疑われたのは、恐怖を人為的に煽り立てて高額な物品購入や寄付を強制した一連の行為に他ならない。相談料だけで数百万円、さらには数千万円単位の現金が動く異常な鑑定ビジネスの内幕が明らかになるにつれ、世間の崇拝は急速に冷え込み、指弾の声へと反転していった。