幕政下で花開いた性愛グラフィックの最高峰といえば、浮世絵師・喜多川歌麿の手による情緻な世界だ。彼の描く春画は、単なる肉体関係の描写にとどまらない。衣服の皺や指先の表情、さらには描かれた男女の息遣いや心の機微までを鮮烈に捉えている。
一方で、華やかな都市の象徴であった吉原遊郭は、欲望の処理場などでは決してなかった。そこは最新のファッションや洗練された会話劇が交錯する一大文化サロンであり、男女が交わす意地や情愛の駆け引きが繰り広げられる特別な空間だったのだ。最新の研究が明かすのは、金銭売買の裏にあった一筋縄ではいかない人間味あふれる恋愛観だ。誇りと切なさが入り混じる遊女たちの生き様は、現代人の胸を揺さぶるリアルな感情のドラマに満ちている。