往時を知る元常連客や、冠婚葬祭で利用した地元住民の回想録、過去のグルメアーカイブに記録された口コミ評判を再検証すると、非常に洗練されたおもてなし空間であったことが浮き彫りになります。
当時の利用者が一様に称賛していたのが、門をくぐった瞬間に広がる非日常感でした。「駅前の雑踏を忘れさせる鯉の泳ぐ池と手入れされた木々」「着物姿の仲居による付かず離れずの接客作戦」など、細部にまで行き届いたホスピタリティが語られています。
昼の時間帯に提供されていたランチ御膳も評判を集めていました。夜の会席コースが1人あたり1万5,000円〜2万5,000円超というハイクラスな価格帯であったのに対し、昼は3,000円〜5,000円前後で本格的な造りや焼き物、季節の炊き込みご飯が味わえる贅沢なプランが用意され、地元の主婦層や同窓会の集まりで予約が埋まるほどの人気を博していました。
一方で、昭和後期から平成バブル期にかけては「敷居が高く、一見客には緊張を強いる空気感があった」「社用族中心で個人利用にはハードルが高かった」という率直な感想も残されており、閉ざされたハイクラス空間特有の緊張感も併せ持っていたことが伺えます。