服部晴治のキャリアにおける決定的な転機となったのが、CBS・ソニー(現在のソニー・ミュージックエンタテインメント)での革新的なプロジェクト群だ。当時、設立から間もない同社は、従来の歌謡界の慣習にとらわれない新しい才能を次々と世に送り出していた。その象徴とも言える金字塔が、1972年に発表された五輪真弓のデビューアルバム『少女』である。
アメリカ・ロサンゼルスの名門スタジオ「クリスタル・サウンド」で敢行されたレコーディング。キャロル・キングやチャールズ・ラーキーといった現地の最高峰ミュージシャンを巻き込んだこの試みは、日本のポップス黎明期における極めて大胆な挑戦だった。言葉の壁や制作環境の違いを乗り越え、五輪真弓の持つ類まれな歌唱力とピアノの響きを完璧な形でレコード溝に刻み込んだ服部のディレクションは、業界内外に強烈な衝撃を与えた。