洗練されたデジタルメニューが普及する一方で、昔ながらの壁貼りメニューや手書きの短冊が持つ圧倒的な存在感も見逃せない。レトロな風情を残す大衆酒場に一歩足を踏み入れると、飴色に燻されたお品書きが独特の情緒を醸し出している。こうした空間の美学を長年にわたり見出し、酒場歩きの魅力を探求してきたのがアートディレクターの太田和彦氏だ。氏が愛するような伝統的な酒場では、お品書きそのものが店の歴史であり、店主の美学を映し出す鏡となっている。
壁にズラリと並んだ手書きの短冊は、客に「今日は何を食べようか」と壁を見回させる視界の立体感を生み出す。このアナログな検索体験こそが、現代の若者や外国人観光客にとっても新鮮なエンターテインメントとして映り、大衆酒場ブームの強力な推進力となっている。