なぜ当時、これほどまでに過激な議論が表面化したのか。背景には、産業界からの「即戦力となる人材」への強い要請があった。かつて経済同友会をはじめとする経済団体が求めたのは、急速にグローバル化する市場で即座に成果を出せる実務型人材だった。この実学偏重の姿勢が、すぐに利益を生みにくい人文社会科学を「不要」とする論理に拍車をかけたのである。
しかし、成果主義と効率性の徹底追求は、思わぬ副作用を生み出した。目先のスキルだけに依存する人材は、技術革新のスピードによって容易に代替されてしまう。短期的な費用対効果ばかりを追い求めた結果、イノベーションを生み出す本質的な思考力が削がれてしまったという反省の声が、いまや経済界の内部からも聞こえ始めている。