公式に記録された直接死因は「肺水腫」である。肺胞に過剰な液体が溜まり、極度の呼吸不全に陥って窒息状態を引き起こす致死的な病態だ。しかし、行政解剖およびその後の司法解剖で検出された高濃度の覚醒剤が、この肺水腫を引き起こした直接的なトリガーであった事実が判明すると、世間の空気は一変した。単なる急病死ではなく、薬物中毒による急性心肺停止という生々しい診断が下されたのである。
その一方で、遺体の各所に残されていた擦過傷や打撲痕は、長年にわたり「他殺説」の火種となり続けた。発見現場である千住の民家前で泥まみれになり、暴行を受けたかのような外傷を負っていたことから、関係者や裏社会による関与を疑う声が絶えなかった。遺族や一部のファンが再捜査を求める署名活動を展開するなど、疑惑の連鎖は社会現象へと発展した。
だが、法医学鑑定の結論は極めて冷徹だった。体表の傷は転倒や錯乱状態での自傷行為によるものであり、致命傷となるような外圧や骨折は見当たらない。薬物の過剰摂取による幻覚と極度の興奮状態が身体を極限まで摩耗させ、肺水腫を不可逆的なレベルまで悪化させたという見解が、法医学における揺るぎない結論となっている。