実際の凶悪犯罪を題材とする実録クライム漫画は、事件の背景にある社会構造の歪みや少年犯罪の暗部を告発する公益性を持つ一方で、被害者や遺族の尊厳、二次被害の防止という重大な配慮を常に求められます。
事実関係をどこまで忠実に描くか、あるいは凄惨な暴力をどのように抑制して描写するかという判断は、作家だけでなく編集部や出版社全体に極めて重い判断を強いる要素です。読者に恐怖や興味本位の刺激を与えるだけの扇情的な描写に偏れば、単なる消費物としての批判は免れません。そのため、実録作品においては事件の全貌を記録するドキュメンタリー性と、倫理的な節度とのバランスが常に問われてきました。