そもそも、なぜ「くぎ煮」という独特の名前がついたのか。その由来は煮上がった姿にある。あめ色に輝き、キュッと折れ曲がったいかなごの姿が、古びた鉄釘のように見えたことからその名が定着した。瀬戸内海の豊かな自然環境が育んだこの郷土料理は、元々は浜の漁師たちが雑魚をおいしく食べるための知恵から生まれたものだ。
昭和中期以降、家庭用圧力鍋やタレの普及とともに一気に播磨地方から全県、そして全国へと広がった。日本各地に様々な魚介の佃煮が存在するが、獲れたての生のいかなごを水を使わずに一気に炊き上げる手法は、この地域ならではの伝統技法である。和食の深みを感じさせる、歴史と風土が生んだ傑作だ。