製パン用語におけるヴィエノワーズの意味は、フランス語で「ウィーン風の(女性形)」を指します。男性形では「ヴィエノワ(Viennois)」となり、パンそのものを指すときは「パン・ヴィエノワ(ウィーンのパン)」、その製法で作られたバゲット状の細長いパンを「ヴィエノワーズ」と呼ぶのが一般的です。
また、製パン業界で頻繁に使われるヴィエノワズリー(Viennoiserie)という言葉は、クロワッサンやパン・オ・ショコラ、デニッシュなど、卵やバター、砂糖、牛乳などを用いた「リッチな発酵菓子パンの総称」を意味します。その語源の中心にあるのが、まさにこのパン・ヴィエノワです。
歴史を紐解くと、1830年代後半、オーストリアの元軍人・実業家であったアウグスト・ツァング(August Zang)がパリのリュ・ド・リシュリューに開いた「オーストリア式パン屋(Boulangerie Viennoise)」が発祥とされています。当時、フランスの庶民が口にしていたパンは小麦粉・水・塩・酵母のみで作る素朴で硬いものが主流でした。そこにツァングが持ち込んだのが、ウィーンの上質な細挽き小麦粉とビール酵母、そして牛乳やバターを練り込んだ艶やかで口当たりの優しいパンでした。この斬新な柔らかさと風味の良さは当時の貴族やブルジョワ階級の間で爆発的な流行を巻き起こし、フランスの製パン技術に革命をもたらしたのです。