真相を紐解く手がかりとなったのは、彼が密かに抱えていた心身の変調だった。関係者らの証言やその後の取材で判明したのは、深刻な自律神経失調症とうつ状態に悩まされていたという事実である。
渡辺裕之さんは、役作りや肉体維持に対して一切の妥協を許さない完璧主義者だった。撮影現場では常に周囲に気を配り、どんな過酷な現場でも弱音を吐かないプロフェッショナルとして知られていた。しかし、社会環境の激変や仕事に対する強い責任感、そして自らに課す高いハードルが、知らず知らずのうちに神経をすり減らしていった。不眠や強い不安感に襲われ、医師の診察を受けるなど治療を試みていたものの、病魔は本人の強固な意志とは無関係に思考の自由を奪っていった。生真面目で責任感の強い人物ほど、助けを求める声を上げられずに抱え込んでしまう――その痛切な現実が浮き彫りとなった。