ドラムというキャラクターを唯一無二の存在に押し上げた最大の仕掛けが、音声翻訳アプリを通じたコミュニケーションだ。無口で強面な巨漢が差し出すスマートフォンから流れるのは、どこか可憐で知的な女性の声。この声を担当したのが、声優界のレジェンドである林原めぐみだ。
主演の堺雅人が演じる乃木憂助をはじめ、緊迫した交渉が繰り広げられる現場に、林原の可憐なデジタルボイスが響き渡る。この対比が生み出すシュールな可笑しさと安心感は、殺伐とした作風におけるオアシスとなった。言葉を発しないドラムの表情変化と、完璧なタイミングで再生される機械音声。ふたつの才能が見事に融合したクリエイティブの勝利だった。