東家寿楽の評判が半世紀以上にわたり極めて高かった理由は、料理のクオリティだけでなく、空間と接客が融合したトータルな顧客体験にありました。数寄屋造りの個室から望む日本庭園の四季、着物姿の仲居さんによる丁寧な立ち居振る舞いは、訪れる客に深い充足感を与えていました。
名物メニューとして圧倒的な支持を集めていたのが、豪華な折衷膳である「寿楽膳」です。純白の更科そばに、サクサクに揚げられた大ぶりの車海老の天ぷら、そして竹老園の伝統を昇華させた「そば寿司」や季節の一品料理が贅沢に並び、昼夜を問わず多くの客が舌鼓を打ちました。また、年末になると「年越しそば」の持ち帰りを求める人々で店頭には朝から長蛇の列ができ、札幌の冬の風物詩として地元ローカルニュースでも度々報じられていたほどです。
口コミサイトやSNSに残る元利用者の声からも、その愛されぶりが鮮明に浮かび上がります。
「祖父の代から通い詰め、我が子のお食い初めも寿楽さんの個室でした。手入れの行き届いた庭の木々を見ながらいただく、喉越しの鋭い更科そばと胡麻油が香る天ぷらは、他所では絶対に味わえない贅沢だった」(40代・札幌市中央区在住男性)
「年末の風物詩だった寿楽の年越しそば。折詰の生そばとつゆを受け取り、家で茹でて食べるのが我が家の30年来の掟でした。暖簾を下ろされた大晦日は、本当に家族で途方に暮れました」(50代・札幌市西区在住女性)