『ハロー・グッドバイ』の制作が始まったのは、1967年10月のことでした。この時期のビートルズは、まさに激動の渦中にありました。同年8月、バンドの精神的支柱であり敏腕マネージャーだったブライアン・エプスタインが32歳の若さで急逝。突然の孤児となった4人は、今後の活動方針を巡って激しい動揺と不安に包まれていました。
グループの崩壊を防ぎ、前進し続けるためにリーダーシップを発揮したのがポール・マッカートニーです。本作の制作秘話として有名なのが、ビートルズのアシスタントであったアリステア・テイラーとのエピソードです。ポールの自宅の音楽室で「曲作りの仕組み」を尋ねられたポールは、ハーモニウム(足踏みオルガン)を弾きながら、テイラーに「僕が言った言葉と正反対の言葉を返してくれ」と提案しました。
「黒と言ったら白」「Yesと言ったらNo」「Stopと言ったらGo」。このシンプルな単語の掛け合い(ワード・アソシエーション・ゲーム)が、そのまま不朽のメロディラインへと昇華していったのです。混迷を極めた状況下でも、ポールは極めて直感的かつポジティブな創作エネルギーを発揮し、瞬く間にチャートを制覇するポップアンセムを書き上げました。