騒動が加熱する中、音楽業界の内部では全く異なる力学が働いていた。当時、ワーナーミュージック・ジャパンに所属していたゲスの極み乙女は、まさにスキャンダル発覚の直後にニューアルバム『両成敗』のリリースを控えていた。タイトルの皮肉な符合も相まって、レコード会社やマネジメントは連日深夜まで対策会議に追われていたという。
当時の制作関係者は次のように証言する。「世間からの猛反発の一方で、音楽関係者の間では川谷の非凡な才能を惜しむ声が強かった。テレビタレントとは異なり、ロックミュージシャンは自らの表現や楽曲のクオリティで勝負ができる。ベッキー側が負った広告違約金や社会的制裁の重さに比べ、川谷は批判を浴びつつも作品を作り続ける道が残されていた。その温度差が当時の現場に特有の緊張感を生んでいたのは確かだ」。結果としてアルバム『両成敗』はチャート首位を獲得し、彼の音楽的評価そのものを完全に抹消することは誰にもできなかった。