深津絵里のキャリアを振り返ると、時代を象徴する傑作の数々が並ぶ。社会現象を巻き起こした『踊る大捜査線』シリーズで見せたひたむきな刑事役から、モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞に輝いた映画『悪人』での壮絶な演技まで、彼女は常に役柄の魂を宿してきた。
日本映画界において、深津の演じる人物がこれほどまでに生々しく、観客の心を揺さぶるのはなぜか。そこには、身につける衣服の質感や日常の所作にまで徹底的にこだわる美意識が存在する。白山春久が手がけるスタイリングは、衣装が「衣装」として浮き立つことを徹底して拒む。登場人物が生活の中で重ねてきた時間そのものを布地に宿らせる職人技が、重厚なヒューマンドラマのリアリティを底上げしてきたのだ。