突き指をした際に、周囲から「指を引っ張れば関節が元に戻って早く治る」と助言された経験を持つ人は少なくありません。しかし、現代の整形外科学において、「突き指を引っ張る行為」は絶対にやってはならない禁忌とされています。
指の関節は、非常に繊細な側副靭帯や腱、軟骨によって支えられています。ボールの衝突などで指先に長軸方向の強い外力が加わると、関節内部では靭帯が過度に引き伸ばされて部分断裂を起こすか、腱が骨の一部を引っ張って剥がす「剥離骨折(裂離骨折)」が生じています。この傷ついた組織をさらに外力で引っ張れば、切れかかっていた靭帯が完全に断裂したり、折れた骨片が大きくずれて関節面が破壊されたりします。結果として手術が必要になるリスクを自ら高めてしまうのです。
受傷直後に行うべき唯一の正解は、患部を安静に保ち、組織の炎症を最小限に抑える「RICE(ライス)処置」の実践です。
- Rest(安静):損傷した指を動かさず、無理に曲げ伸ばしをしない。
- Ice(冷却):氷嚢や保冷剤(タオル越し)で患部を冷やし、内出血と毛細血管の拡張を抑制する。
- Compression(圧迫・固定):テーピングや副木を用いて過度な腫れを防ぎ、関節の動揺を抑える。
- Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置に保ち、重力を利用して鬱血と浮腫(むくみ)を軽減する。
初期の段階でこのRICE処置を徹底できるかどうかが、組織修復にかかる日数を数週間単位で短縮させる決定打となります。